『Salesforceのデータの重複は、誤った架電にも繋がってしまう悩ましい問題だった』 株式会社SmartHR様 ”mergency”導入事例インタビュー

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    人事・労務管理をペーパーレスで完結できるクラウドソフト「SmartHR」。2015年のサービス開始から、登録社数は3万社を超えています。伴走型でSalesforceの導入支援を行うPraztoは、インサイドセールスやカスタマーサクセスなど主要な組織へのSalesforce導入から、セールスチームのデータの可視化についてのLookerなどBIの活用まで、幅広くご支援をさせていただいています。
    今回のインタビューでは、弊社が提供する『データ重複除外サービス”mergency”(マージェンシー)』を導入されるに至った背景や解決できた課題、今後への期待などについて、株式会社SmartHR インサイドセールスグループの新田昇平さんに伺いました。

    左:新田 昇平(にった しょうへい)
    株式会社SmartHR インサイドセールスグループ IS Opsユニットチーフ。新卒で総合人材会社に入社。人材紹介部門の営業担当として従事。分社化、事業移管のタイミングで株式会社SmartHRに入社。1人目のSDRとしてインサイドセールス組織の立ち上げを担当。 全社でカスタマーサクセスを意識したセールスプロセスの、中核を担うインサイドセールス組織にて、一貫してKPIマネジメントやオペレーション設計、メンバー育成に携わる。
    右:芳賀 怜史(はが さとし)
    Prazto代表。1982年生まれ、38歳。大学卒業後、SIerに就職。外資系マーケティング会社やSalesforceゴールドパートナー企業と3社を渡り歩きながら、10数年エンジニアとして働き、2019年1月にPraztoを創業し同年5月に独立。伴走型のSalesforce導入支援事業を通じて、企業課題の解決とエンジニアの育成を支援する。

    「リード獲得が加速するほど、データの重複も増す」というジレンマが課題

    ーー 弊社にご相談を頂いた時点での、データの重複の問題を改めて詳細に聞かせてください。

    芳賀:弊社はSalesforceの導入支援を主な事業としていますが、以前からいろいろなお客様より”登録データの重複の問題”より相談されていました。特に、多くのお客様をリードとして保有するSaaS事業者であるSmartHR様では、この登録データの重複はとりわけ大問題になっているのかと思っています。SmartHR様ではどのような課題があったのかについて改めて聞かせてください。

    多くのお客様がお悩みの”データの重複”の問題(※イメージ)

    新田:SmartHRでは、MQL(※Marketing Qualified Lead)の段階からSalesforceのリードを取引開始して『取引先責任者』として管理しています。処理の効率化を目的として、そのリードから取引開始をする際の処理を『自動処理で取引先と取引先責任者を無条件に新規に作成する』仕様にしていました。それは正しかったと思っているんですが、今度はその副作用として”データの重複”も加速化してしまったんです。マーケティング施策を強化してリード獲得の速度が高まるにつれ、取引先レコードも増加。結果として重複も加速して発生するようになってしまいました。

    芳賀:なるほど。SmartHR様ではオーガニック、いわゆる自然流入によるSalesforceのリード獲得はかなり多い印象なのですが、件数はどのくらいですか?

    新田:直近では、月2,500~3,000件ですから、1日に100件近くになりますね。
    それだけの問合せ増を叶えたのが、マーケティング施策の強化です。オンライン施策では自動見積やコスト削減シミュレーターに加え、費用対効果関連のコンテンツを企画しています。オフライン施策も、イベントや展示会、セミナーでのコミュニケーションを強化して、現場の労務担当者はじめ、1社の中でさまざまなロールの方にアプローチを意識しています。その成果もここまで増やせたと考えています。

    芳賀:そのようにして2019年頃から登録件数が増え、それに伴って副作用としてデータの重複も増えてしまったわけですね。

    ーー データの重複が引き起こす現場の問題にはどんなものがあるでしょうか。

    芳賀:取引先の重複が問題に発展するのは、他社様でもよく聞かれます。多いのは、架電にまつわるトラブルですね。取引先データが重複していると、その会社がすでに契約しているクライアントなのか、商談中なのかが見分けられず、架電してよいのかをインサイドセールスが判断しづらいんですよね。商談中なのに新たにアプローチしてしまっては信頼関係を損ねかねません。クレームに発展してカスタマーサクセス部門から架電活動そのものをストップしたというお客様もいらっしゃいました。SmartHR様でも、それに類する課題はありましたか?

    新田:誤った架電に関するリスクに関しては、弊社も同様にかなりリスクのある問題と認識していました。その他にもメルマガ配信する際のリスト作成などにも影響しており、かなり注意して作成しなければなりませんでした。その他の悩ましい問題として挙げられるのは、架電や訪問などの商談活動の保存先に関しての問題です。そのお客様に対して過去にどのような対応をしていたのかの活動(行動)履歴を確認できるのが、CRMとして期待する機能だと思うのですが、同じ法人が複数に分かれて登録されていると、この時の活動履歴も分かれて登録されてしまうんですよね。こうなってしまうと、活動履歴を確認する作業がとても大変になってしまう。

    芳賀:なるほど。2020年6月に弊社にご相談を頂きましたが、このタイミングで改めて『重複除外』を強化されたのには、何かきっかけがあったのですか?

    新田:エンタープライズに対する施策の強化ですね。より包括的に、担当者を絞ってアプローチしようとしたときに、1つの取引先における担当者を明確に決めて、データをそこに集約したいニーズが顕在化したタイミングだったといえます。

    芳賀:たしかにエンタープライズのお客様の場合には、担当者の方も多くなりますので、先程申し上げた活動履歴の登録先レコードの問題の影響は大きくなってしまいますよね。

    新田:まさにそうなんです。そのような事情もあり、このタイミングでより本腰を入れて対応しようとなったんです。

    データ重複によって発生する運用上のトラブルの例

    「国税庁の法人番号で一致する取引先の下に、取引先責任者として関連付けてほしい」といった個社ごとの要件にも対応できるmergency

    Praztoが開発・提供している
    Salesforceのリードや取引先責任者のマージサービス『mergency(マージェンシー)』
    SmartHR様の課題をmergencyを活用して解決いたしました。

    ーー 実際に『重複除外』を考えるにあたっては、さまざまな解決手段を検討されたことと思います。社内でどのように進められたのですか?

    新田:まず最初に社内で討議をしたのは、何をキーにして取引先との一致とみなすのか、という点でした。弊社はZuoraを導入していますが、Zuoraの取引先IDはあくまで契約後のお客様に付与されるものですので新規のリードには使えません。そこで、法人でユニーク(特異)になるものは・・・と考えて辿り着いたのが、法人番号でした。弊社は運用が便利になるSaaSも積極的にしようしており、Sansan CI、FORCAS、ST&E(スタンディ)などを導入していました。これらのSaaSにより、リードがSalesforceに登録されてしばらくすれば、我々が何もせずとも自動的に法人番号が付与されるんですよね。

    ですので、その法人番号を使用して、リード/取引先責任者/取引先の一致を判定しようと思ったんです。そうして法人番号を取得した上で、どのようにマージしていくかと検討を進め、その段階でPraztoさんに相談したわけです。

    芳賀:Salesforceの標準機能の重複ルール一致ルールでは、ワーニングやレポートでの重複の検出などは出来るんですが、「マージ」や「自動での取引開始」までは出来ないんですよね。このお悩みを持ってるお客様って本当に多いんですよ(笑)。弊社はSaaS事業者のお客様がとても多いのですが、おそらく全てのお客様とこのお悩みについて話をしていると思います。この課題を解決するサービスを構築していて、ちょうどmergencyのベータ版が完成していたんです。

    新田:ちょうどいいタイミングで、当社にとってまさに渡りに船でした。

    芳賀:SmartHRのトライアルアカウントはZuoraシステムとの関係上マージの対象にしないでほしい、などのご要望にもmergencyでは柔軟に対応できるので、ご提案した弊社としても解決できてとても良かったです。

    新田:あと嬉しいのが、プログラムを改修しなくても条件変更が出来るので、都度発生する問題点に対して、ちょっとしたカスタマイズ程度であれば社内のメンバーでまずは解決できるところです。スピード感を持って改善できる体質をめざしているのでそこも嬉しかった。

    実際にSmartHR様で設定したmergencyの条件指定の画面。
    国税庁の法人番号を一致条件にして取引先を関連付けている。実行もプロセスビルダーから起動されるので、複雑な条件にも対応できるし、お客様の方で細かい条件指定が可能。

    芳賀:それはmergencyの開発思想ともマッチします。やはり、Apexで開発するとなるとそれだけで何ヵ月も要しますし、仕様変更のたびに現場が止まるようだと困りますよね。

    アナログだったデータの重複確認、マージ作業の負荷がかなり軽減された

    ーー 導入されて、実際に現場の方々の反応はいかがですか?

    新田:重複のレコードが少なくなったという声が多数得られました。また、mergencyを使って今回の仕組みづくりを先導したのはインサイドセールスですが、それ以外のマーケティングやカスタマーサクセスなど、取引先に関わるあらゆる部門でやはり重複に関する課題を抱えていたようで、それらを一気に解決に向かわせるきっかけになりました。リリース時の社内周知では他部署からかなり感謝されましたね(笑)。

    芳賀:チーフという立場から見て、特にメリットとして感じられていることは何ですか?

    新田:これまでは現場で都度行っていたマージ作業の手間や時間が削減できたのは大きいですね。それというのも、マージ自体がとても気を使う作業なんです。当社でもさまざまなSaaSを導入していて、すでにPraztoさんにSalesforceとそれらSaaS達とのスムーズな連携を支援いただいていますが、登録データでいうと、マージする際に必要なデータまで消してしまうようなことがあれば、その連携にもダメージを与えかねません。たとえば、サブスクリプション管理で請求・決済を担うZuoraでデータ管理を間違って消してしまうと大変なことになります。

    芳賀:なるほど。そうすると、かなりの工数、時間が割かれていたのですか?

    新田:それはもう、かなり・・・ですね。重複除外のためだけに、専任で派遣の方をお願いしていました。
    手順としても相当アナログです。まずPraztoさんに作ってもらったLookerでの重複取引先のリストに対して、それぞれのデータの情報の正否を見て、マージしてよいかどうかを判断します。マージする場合は、どちらの情報を残すかを判断する。その際に、他のSaaSとどう紐づいているかもチェックしなければなりませんし・・・。フロー自体がまず込み入っていました。
    また、マージのオペレーションも、単純な重複なのでサクサクとマージしてもらえればよいリストについてはアウトソーシングできますが、その取引先についての経緯や背景を知った上で判断する必要のありそうなリスクをはらんだリストについては、アウトソースではなく社内の社歴があるベテランの手が必要でした。

    その重複除外作業がだいぶ軽減されました。これは本当に大きい(笑)。

    mergencyのサービス紹介の中の資料。重複が発生してから手動でそれを除外するというのはとても大変な作業です。

    これからのリモートワークシフトの時代には、作業の標準化が尚一層重要に。その基盤としてのデータの整備は必須になる

    芳賀:ところで、ISチームは1年前の約20人から、今はほぼ倍増と人員も着々と増えておられますが、その中でチームの運用として意識している事を聞かせてください。

    新田:そうですね、できる限り運用はシンプルに属人化しないようにと努めています。組織が急成長、急拡大するときって、仕事を進める上でもやることが急激に増えてしまうものなので。たとえば、今ISチームは5ユニットにまで増えていますが、リードを獲得した時点でどのユニットに付けるかなど、さまざまにルールを決めて円滑に回るようにしています。そしてその上で重要になってくるのが、データをきれいにしておくことなんですよね。

    芳賀:なるほど。このコロナ禍でリモートワークが加速しているので、なお一層データのクレンジングや、そのオペレーションを簡素化させておくことは重要になりますよね。

    伴走型のSalesforce導入コンサルティングだからスピード感をもって実現できた

    ーー 伴走型のご支援は、今回の課題解決にあっていましたか?

    芳賀:ところで、Praztoでは伴走型でのSalesforce導入コンサルティングとしてご支援をさせていただいています。それについて、メリットは感じていただけていますか?今回のような改修では、『まず実施してサンプリングの結果を両社を確認して次のアクションを決める』というのが有効だと思っています。ご意見をぜひ聞かせてください。

    Praztoの伴走型Salesforce/SaaS導入支援の進め方
    SaaSの「すぐに使って試すことができる」を最大限に活かし、1ヶ月ごとに「コンサルティング→実装・設定→運用支援」を繰り返します。
    これにより運用してみて初めてわかる「もっとこうしたい」を効果的・効率的に、早く引き出すことができます。

    新田:伴走型でのご支援があっていたと思っています。今回だけでなく、こちらの方が時代に合っていると思いますね。かつてのスクラッチのシステム開発だったら、今回のような重複への対応においても、法人番号を使おうとなれば、それを取得する仕組みから開発しなおさなければならなかったでしょう。それが、SaaSを連携させて使う今の時代には、方向性を決めたらサクサクと一緒にやってみましょう、というスタイルで進められるわけですね。また、SmartHRでは社内の体制も、まだベンチャーで組織拡大の途上にあるがゆえに固まっていません。ですから、システム開発についても社内でどこまでやるべきか。また、やりたいかというところも固まりきっていないもの。そんな柔らかい状態にも柔軟に対応してもらえるのは、伴走型の支援スタイルだからではないでしょうか。特にPraztoさんには社内の事情や空気感も理解いただけているので、必要なときにうまい按配で入ってもらえるのが有難いですね。

    芳賀:そういう点を評価いただけているのですね。ありがとうございます。
    一緒にPDCAサイクルを、1ヵ月単位くらいで順時回していくほうが、結果的に成果にもつながりやすいように思えます。

    新田:そのとおりで、大事なのは、あくまでアジャイルなんですよね。スタートアップなのでどんどんと組織も変わっていくんですよね。それに合わせて必要となるSalesforceの設定のあり方も変わる。ですので、常に何かしらのチューニングをやっていくべきだと思います。ですから、伴走型の支援がニーズに合っているのですね。

    芳賀:ありがとうございます!

    新田:伴走型の利点でもあるのですが、Praztoさんとはもう1年以上も一緒に仕事をしているので、コミュニケーションがだいぶ楽なので本当に助かっています(笑)。パートナー企業の方と何かを進めるときに、背景をどこまで伝えるかといったところは、意外と気を使うものなんです。また、SaaS事業社において実績が豊富なのも頼りになります。

    芳賀:ありがとうございます。Praztoとしても、コンセプトである伴走型支援とともに、今後はさらに「mergency」のようなプリセットのプロダクトに力を入れていこうと考えています。これからも引き続き、よろしくお願いいたします!

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