法律・技術・業務に精通した、eKYC(銀行や証券口座などの開設時に求められる本人確認をオンライン上で行う技術・プロセス)の専門企業である株式会社TRUSTDOCK様と、SalesforceをはじめとしたSaaS導入 / DX支援にて多くの実績を持つPraztoが業務提携を行い、銀行・証券・保険などの金融機関をはじめ、不動産管理から人材管理も含め、汎用的に利用できるSalesforceによる本人確認ソリューションの提供を開始しました。
TRUSTDOCK × Experience Cloudを活用した
オンライン本人確認ソリューション
e-KYC/本人確認APIサービス「TRUSTDOCK」
今回は同社の代表取締役 / CEOの千葉孝浩さん、取締役 / COOの菊池梓さんのお二方に、同社の扱うeKYCサービスの特徴やSalesforceソリューションを必要とした理由、今後の展望、そしてPraztoへの期待について伺いました。
株式会社TRSUTDOCK 代表取締役 / CEO。ガイアックスでR&D「シェアリングエコノミー × ブロックチェーン」でのデジタルID研究の結果を基に、日本初のeKYC / 本人確認API「TRUSTDOCK」を事業展開し、専業会社として独立。シェアリングエコノミー等のCtoC取引に、買取アプリ等の古物商、そして送金や融資、仮想通貨等のフィンテックの口座開設まで、あらゆる法律に準拠したeKYC / 本人確認をAPI連携のみで実現。様々な事業者を横断しての、デジタル社会の個人認証基盤、日本版デジタルアイデンティティの確立を目指す。
株式会社TRUSTDOCK 取締役 / COO。2007年にWEBプログラマーとして株式会社ガイアックスに入社し、受託開発案件の開発、およびCS向け監視・ユーザーサポートツール等のプロジェクトマネジメントを経験。その後、株式会社コナミデジタルエンタテインメントにて海外向けゲーム開発を行ったのち、株式会社ガイアックス・アディッシュ株式会社にて新規事業の開発に取り組む。2016年にシェアリングエコノミー業界へのブロックチェーン技術の活用として、本人確認・デジタルアイデンティティを実装、後に本人確認サービス部分を「TRUSTDOCK」としてサービス化し、独立。株式会社TRUSTDOCKでは、業務執行の責任者として、営業支援・プロダクト開発内容の策定・オペレーション関連の顧客折衝・海外事業・海外技術調査等を行なっている。OpenID Foundation Japan KYCワーキンググループ ポリシーチームリーダー。
株式会社Prazto代表。SIer、外資系マーケティング会社、Salesforceゴールドパートナー企業と3社の経験の中でエンジニアリングを通じて多くのお客様の課題解決を行う。「伴走型のSalesforce導入支援によるお客様への価値の提供、エンジニアリングを通じたオーナーシップのある働き方の創出」この両立を実現する事業を展開する株式会社Praztoを創業し独立。創業から現在に至るまでリードコンサルタントとして従事。 多くのSaaS企業のSalesforce組織の構築において、Salesforce組織のあり方の討議から実装までを一気通貫でご支援し成功に導く。
TRUSTDOCKによるeKYCソリューションの提供を、APIとしてだけでなく、CRMの上に本人確認の機能群を乗せたパッケージとして製品化
芳賀:TRUSTDOCKさんは著名なeKYCプロバイダーですが、どのような事業を展開されてきたのかを改めて聞かせてください。
千葉:当社はKYCの専門企業として、郵送不要でネット完結するeKYC / 本人確認をはじめ、既に多くの企業において採用・実稼働されているデジタル身分証といったRegTech / SupTechサービスを提供しています。
それらに付随するさまざまな業務、たとえば郵送するものや業務単位で、きめ細かくアプリケーション作っていき、そうして作られたそれらのアプリケーションを製品ラインナップとして多数取り揃え、お客様のビジネスが準拠する法律によって、当社のパッケージを組み合わせて提供できるのが特徴です。
TRUSTDOCK様と今回開発を行った
本人確認を含む顧客管理用CRMソリューションの流れ
芳賀:そのような御社の課題は何だったのでしょうか。
千葉:これまでは、APIのみを通じて本人確認業務の依頼・返却を行ってきました。開発が得意な事業者はAPIでカスタマイズしやすいメリットはあるのですが、一方でシステム開発が難しい事業者にとっては導入ハードルが高くなってしまうという課題がありました。
芳賀:それを解消するために、今回の「本人確認CRMシステム」の開発を依頼されたわけですね。
千葉:そうなんです。元々お客様より、顧客管理も含めたソリューションへのご要望も多かったので、CRMの上に本人確認の機能群を乗せたパッケージとして製品化し、ラインナップに加えようということになりました。
芳賀:世の中には数多くのCRMソリューションがありますが、Salesforceを選ばれたのはなぜですか?
千葉:まず、当社はグローバルにも展開しているので、国内外問わず提供されているSalesforceが真っ先に候補に挙がりました。あとは、汎用性がポイントです。Salesforceは他社の活用例を見ると、柔軟に作りやすいのを実感します。
eKYCというのは、何かしらの法律に準拠した領域で提供させていただくものです。たとえば、犯罪収益移転防止法や割賦販売法、古物営業法、携帯電話不正防止利用法、出会系サイト規制法…といった法律ですね。そして、その運用には改定や変更、解釈の問題などもあって、要件をかっちりとは決めにくい部分があります。
芳賀:たしかに、SaaSが扱う領域も固まりきっていないことが多いですね。だからこそ柔軟性が求められますね。
千葉:eKYCもまさに、いろんな要件が固まっていない世界なんです。つくるもの全部が見えてはいない中で、新しい物を作るわけです。Salesforceは多様な業界、業種や規模感で、汎用性高く使われている実績があり、まさに求めているものでした。
芳賀:御社のeKYCサービスは、金融機関や自治体など、幅広い業界、業種に対応されていますが、Withコロナ時代には対応範囲はますます広がるでしょうか?
千葉:そうですね。レグテック(IT技術を活用して様々な規制への対応を効率化する仕組み)として、当社製品を使うと規制対応できるという世界観ですので、これまでも金融機関や通信、不動産、人材系の契約関連など、とにかく何らかの法規制に則って業務を進められる業界、業種はすべて対象となり得ます。
コロナ以降は非接触・非対面の流れで、面接や営業、教育といった、従来対面が常識だった領域が一気にオンライン化しています。本人認証シーンがますます重要になり、かつ安全・円滑に業務プロセスに取り込まれるべきですので、まさに当社の出番。行政のデジタル化への勢いも不可逆で、未来がぐんと加速して訪れた印象ですね。当社にとっては確実に追い風です。
芳賀:全く新しい業界の案件を扱う場合には、御社のeKYCのコアの部分をその業界で使いやすいようフィットさせる、コンサルティングもカギになりそうですね。
千葉:そうなのですが、そのためには当社のエンジニアも含めた全員が、その業界と法律に挑んでいくようなところがあります。そのガッツは、当社の特徴かもしれませんね(笑)。
未知だったSalesforceの「技術面」はもちろん、「歩き方」や「世界観」まで、しっかりガイドしてくれたPrazto
芳賀:今回、Salesforceのアプリケーション作るとなった際に、御社内でプロダクトを作っている開発者の方がおられながら、敢えて外部のPraztoにご依頼いただいたのは、Salesforceの開発というのは特殊だと考えられたのですか?
菊池:そうですね。Salesforceはエコシステムがしっかりしている分、外から入っていく場合は難しいこともあるだろうと思い、Salesforceの世界で実績のある方と組むべきと考えました。
芳賀:改めて、Praztoを選んでいただいたポイントについて教えていただけますか?
菊池:まず最初に、開発の柔軟性を重視して、同じチームとして一緒にやっていけるかがありました。そうして検討させていただいた何社かのベンダーは、開発の手法がウォーターフォールに近い印象だったのですが、Praztoさんの場合は伴走型支援を打ち出されていて、一緒に作っていこうという感じがすごくあったんですね。アジャイルで柔軟に開発していけるというのが決め手でした。
Praztoの伴走型での支援の進め方
まず使ってもらってFit&Gapを行うことによって、
素早い導入効果を実現させます。
芳賀:ありがとうございます。当社では「技術力の高さ」と「柔軟な対応」を大事にしてるので、そこを評価いただけたのは大変有難いです。ここまでの評価はいかがですか?
菊池:まず、しっかり動くものを作っていただけたというのは、当たり前かもしれませんが、やはり「技術力の高さ」によるものでしょう。また、当社が不慣れなSalesforceについて、使い方を含め、世界観をガイドしてもらえたと思っています。要件に対応する開発スタイルではなく、伴走型の良さですね。
さらに、現在の継続的開発フェーズに入って、週次で成果物を見せていただいていますが、この進め方だと新たな業界からのニーズなどで機能追加やアジャストが必要になったときも、切れ目なく開発を進めていけると思っています。当社のビジネスを組み立てやすく、助かっています。
CRMとしてパッケージ化すると、非エンジニアの担当者からも、理解や信頼が得られやすい
芳賀:今回の「本人確認CRMシステム」が完成し、御社の事業にはどのような効果がありましたか?
菊池:現在、テスト環境を動画にしてお客様へのご案内に用いているのですが、Salesforceの上で本人確認が動いていることがイメージされやすいようで、当初に想定していた以上に幅広い業界からも関心を持っていただいています。利用シーンをお客様ご自身で想起されやすいのでしょう。APIのみで提供していたときには、APIの分かる技術者でないとイメージしづらかったのかもしれません。そこは、サプライズ的な効果でしたね。
もう一つはシステムへの信頼度です。当社のeKYC部分以外のCRMに対する信頼を問われる場合も、コンプライアンスの厳しい業界だと大いにあるのですが、Salesforceであれば金融機関でも使われているという信頼性、堅牢性をアピールできます。これも副次的ですが、良い効果が得られている点です。
芳賀:なるほど。たしかに、Salesforceの導入支援をしていると、多様な導入実績が豊富にあることは大きなメリットとして感じられますね。カウンターパートとして接する方がエンジニアではなく、営業など現場担当者である場合など、システムがプリセットされているのは話がしやすいとも思います。
千葉:そうなんです。当社もAPIで提供していたときには、開発者向けのソリューションだったのですが、eKYCのニーズも高まって、アーリーアダプター層からマジョリティーにおりてきた。このタイミングで、この機能を付与したCRMシステムの形となり、開発に関しての知識が無いお客様にも導入しやすく、より幅広いお客様に提供できるようになります。他方で、当社は身分証のダッシュボード的なアプリも製品としてラインナップしています。この、企業側の受けのCRMと、ユーザー側が提供するデバイスの両輪があることによって、関連する情報の流通網ベースが構築できるのではと期待しています。
芳賀:御社のように実績があって本人確認に精通したサービスが製品となっていて、しかも使い勝手のよいCRMになっているというのは大きいと感じますね。いろいろなお客様に信頼感を持って活用いただけるだろうと思います。
菊池:そうですね。やはり個人情報を取り扱って保管するという点においては、システム上はSalesforceがあり、Praztoさんが今回作ってくれたシステムがあり、その上にAPIがあるという構造の中で、各システム間の接続部分には技術力がないと、仕組み全体の脆弱性につながりかねません。ですから、実践的な開発力、技術力のある方、セキュリティの一定の知識をお持ちの方に作っていただきたいと思っていたので、その点でもとても満足しています。
千葉:やはりAPIだけで提供していると、お客様側でそれをどう組み込んで設計されるかの巧拙の問題はあり、当社のサービスを120%活用しきれないこともあり得るんです。それが、Praztoさんのような技術力のあるSalesforceの専門家集団がきっちりと、当社サービスを組み込んだ製品に仕上げてくれたことで、そうした不安からも解放されました。
芳賀:社会におけるeKYCへのニーズはますます高まると思うので、今回の御社のeKYC機能を乗せたCRMシステムも、これからも多様な業界のシステムに組み込んでほしいというニーズがどんどん出てくる気がしています。そうしたケースにも、一緒に取り組んでいきたいですね。
千葉:そうですね、ぜひ!
芳賀:Praztoでは、日々登場するような新たなSaaSにおいても、Salesforceとの連携を手がけさせてもらう機会が多いのですが、それで感じるのは、Salesforceと各種アプリケーションの「相性」があるということなんです。そのなかで、今回のCRM基盤というところと御社のeKYCのような特定業務に特化した課題の解決ソリューションのというのはとても相性が良いので、多様な業界に展開できることを期待しています。
千葉:このeKYC市場というのはまだ黎明期であり、これからが拡大期だと認識しているので、可能性は無限大だと考えています。その提案や実践を、一緒に進めていきたいですね。要件がこれから生まれる世界の、さまざまな開発をご一緒できたらと思っています。
芳賀:ありがとうございます。Praztoとしても今回のCRM開発で、eKYCの知見とノウハウは相当蓄積できたので、ぜひ活かしていきたいと考えています。一緒に、新しい業界のeKYCの仕組みを作っていけたらうれしいです。
千葉・菊池:よろしくお願いします。